水中写真を始めてから、約20年が経った。
気が付くと人生の半分あまりの時間を、海の生き物を撮影して生きてきた。

1998年にガイド業を行っていたモルディブから帰国し、フリーランスフォトグラファーとして独立した。当初から撮影の機会を手繰り寄せては、何でも貪欲に写し撮った。

海の中は様々なテーマに溢れていた。
プランクトンからクジラまでの図鑑写真、群れ、求愛、産卵などの生態写真や海辺の明るい広告写真。そして、都会の海や人間の廃棄したゴミに住む海の生き物などテーマは多岐に渡る。

それにプラスして、「海を宇宙のように表現する」「巨大生物の接近写」「生き物たちの精緻なデザイン」「正面顔シリーズ」などを情熱的に撮影している。そして、いまだに私の海への興味は尽きることがない。

今回、写真展「青い地球のカシュ」の構成を考えているときに、無意識に大きな軸によって、作品の選定をしていることに気が付いた。

テーマ(軸)は、「未来に残したい海」だった。

展示作品には、未開の海とそこに暮らす生き物、または人間の生活圏内に住む生き物、そして、サンゴの白化現象による荒廃から再生した海などがある。自然は、いとも簡単にその姿を変えてしまう脆さと、一瞬で全てを奪ってしまう巨大な力を兼ねている。私の作品群には、もう見ることのない、失ってしまった美しい海中景色の写真も多い。

3.11以降、私たちを取り巻く環境は大きく変化した。私も人として、写真家として、そして、子を持つ親として、未来に対する責任、覚悟、そして他者への思いやりを強く持つようになった。この経緯は、今回の展示作品の選定に大いに影響を与えた。今のタイミングで、みなさんに見て頂きたい作品での構成を目標とした。

私たちの住む星は、「ガラスの地球」であり、海は、海中生物たちにとって大切なカシュ(隠れ家)である。そして、我々人間にとって普段目にすることない海の中は、きっと「青い地球のカシュ」なのだと思う。

この先には、<未来に繋げたい海中景色、そして、同じ地球の住人である生き物たちの素顔>が待ち受けています。ゆっくりとご覧ください。


鍵井靖章